待ち合わせ場所は、始めて待ち合わせをしたカフェ。
都心を巡る電車が行きかう線路が見下ろせるガラス張りのお店。
ガラス越し駆けてくる華織の姿も見えた。
人並みに乗って器用にすり抜けて来る。始めて会った時のように。
自動ドアが開くのも待っていられないくらい華織は急いだ。
自分が入れる隙間が開くとスルリと抜けて店内に入り込む。
クリスマスイブ。店内はいつもに増して人がいっぱいでガヤガヤと賑わっている。
ホールのスタッフも急がしくテーブルの間をくるくると行き来していた。
「いらっしゃいませ。」
トレンチ片手に店長が華織を迎えた。
「ハッ、ハッ、ッ・・ま、待ち合わせなんで・・ッ。」
走れる所は頑張った。冷たい空気が喉を痛めるくらい。
そう言いながら華織は店内にグルリと瞳を巡らす。
暁何処?
中央の柱の横に暁が華織を見ているのが分かった。
「ンッ・・・すみません。」
店長の脇をすり抜けて華織は暁めがけて歩き出した。
店内の色合いも賑やかで、色とりどりのリボンやクリスマスバァージョンの大小様々な紙袋があちこちのテーブルに見える。
クリスマス、世界中の人がこの時を祝う。祝い方はそれぞれだけどそれはスゴク凄い事のような気がする。
華織が向かって来るのをずっと見てる暁の席に辿り着く。
「さ、暁、ゴメン・・・ッ・・ハ・・ッ、・・・。」
肩で息をつきながら華織は時計を見た。
間に合った・・・
「ハァァ~・・・」
14:55の文字を見て華織は大きく息を吐く。
喉の中が乾燥してて吐く息が掠れて痛い。
〈大丈夫?〉
暁のメモがテーブルの上に見える。
暁の顔も窺うように傾げてた。唇の端をキュッと上げて微笑んでいる。
華織はその微笑から瞳を逸らす。心臓のドキドキが走ったせいで無くなる前に。
「ンッ・・大丈夫・・・」
店内の暖かい空気は華織の肺の中を徐々に温める。
「いらっしゃいませ」
サービスの女の子がメニューと水を持ってきた。
いつも居る子で八重歯のかわいい女の子。この子の対応を華織は気に入っていた。邪気のない笑顔がいつも向けられる。
華織の隣に立って戸惑う彼女。困ったような顔をしてチラリと華織の顔を見た。
?
そんな彼女は意を決したようにトレンチの上のグラスに手を掛けると暁の隣にコトリと置いた。
メニューも置いて「お決まりでしたらお呼び下さい。」と笑顔で一言掛けてきて、他の席のお客に呼ばれて立ち去った。
テーブルの上に置かれた暁の隣のグラス。
華織は暁の隣の椅子を引くとストンと腰を下ろした。
隣の席のヒト達が僕らを気にしたのは気づかない振り。筆談し始めるとあまり気にしなくなってくれるから。
彼女が困ったのが分かった。置かれたグラスを見ながら華織は頬を緩めた。
忙しくてタイミングが早かった彼女はまだ席に座っていない華織の水を何処に置くか迷った。
フフッ・・・
僕の位置は暁の左隣だ。世界中の皆が知っている気がした。
店内の暖かさにコートを脱いでマフラーを取り、華織も鞄から紙とペンを取り出して暁に話掛けようとした。
そんな華織の手を止めるように暁が手を添えてきた。
触れられた瞬間ドキッンと鼓動が跳ねる。華織の手は暁の手の下から逃げた。
逃げたはずなのに暁の冷たい手の暖かさに触れられてる感があって熱が上がる。
出掛ける前の自分の行動から暁が電話越し耳に響かせたキス、昨日の告白。すべてが手伝って華織の体温を又上昇させる。
着いてから一度も視線を合わせようとしない華織。
隣に座る華織の顔は俯いていてよく分からないけれど、寒い中走ってきて、黒い髪の隙間で小さな耳までピンクに染めている。
暁は華織のピンク色に染めた耳元に指先を伸ばす。
ガタンッと椅子を響かせて華織が跳ねた。 周りの客も一瞬注目する。
耳を押さえてピンク色に染めている顔が暁を睨む。
暁の指先に華織の熱い体温が残っていた。
冷たいと思っていた耳たぶが思いの他熱くて暁はびっくりした。
華織?
華織の子猫のようなまあるい瞳も驚いていた。そして、さくらんぼのような唇が小さく「 あ 」の字を形取っている。
だけど、始めて会った時と違うのは、華織はそのまま逃げた。
華織!?
耳元を押さえたまま華織は来た道を来たときのようにすり抜けて自動ドアの隙間を抜けてカフェから姿を消した。
華織の鞄もコートもマフラーも暁と一緒に置き去りにして。
To be continued

こんにちは湊です。改めてページにお立ち寄り下さいましてありがとうございます(__)゛ペコリ
更新とてものろのろしています・・・。青春18切符っを使って乗り込んで、途中下車しながらなんとか目的地へと向かっています。(=_=;A)
いろいろと含めてお気になさらず気長にお付き合いくだされば幸いです。
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湊水貴
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